
Windows 10移行の前に知っておくべきこと – プロキュアメント(購買)
11月 08, 2019
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2020年1月、Windows 7 のサポートがいよいよ終了します。多くの企業が移行作業を終え、支援業務に対するお客様からの要望も減少しつつありますが、サポート終了を目前に控えた今から動き出す会社もあるかと思います。プロジェクトのチームリーダーは、自社で初期のプランニングフェーズをまとめた上げ、これから専門のコンサルタントやプロジェクトマネジメント会社を探さなければならないことに焦りを感じているかもしれません。このコラムでは、多国間/多言語でコンサルティングを提供する私たちの経験から、マイグレーションプロジェクトにおける購買(プロキュアメント)、OSのエディション、展開などについて留意すべき点について解説したいと思います。
グローバルカンパニーにおける購買
マイグレーションにおけるPCの手配には、大きく二つの方法があります。既存のPCのOSをアップグレードするか、もしくは既にWindows 10がインストールされている新しいPCを手配するかの二択です。後者の新しいPCを手配する場合に、さらに二つの選択肢があり、新しいPCを購入するか、リース(レンタル)するかに分かれます。どちらを選ぶかによって価格や納期に違いがでます。いずれにしても、契約書の押印さえ済めば1カ月程度で問題なくPCがオフィスに届くと思っている人もいるかもしれませんが、想像ほどスムーズに行かないケースもあります。
ここで説明するのは、あるグローバル企業とその子会社にあたる日本企業のケースです。親会社である海外本社は、あるPCメーカーとグローバル調達契約を結んでいました。しかし、その詳細は現場に共有されておらず、私たち東京の担当チームが日本子会社のリクエストに沿って販売代理店に問い合わせたところ、グローバル契約扱いなので親会社に確認してほしい、と返答が戻ってきてしまいました。そうした場合、まず親会社に当該契約ついて確認を行い、またどこで購買をプロセスできるか、例えば本社経由で発注をしなければならないのか、または別の国なのか、それともそれぞれの国で発注できるのか、などを確認する必要があります。例えば、本社が発注の全権限を持っている場合には、納期が予想よりずれ込むことを覚悟しなければなりません。特に日本国内においても、海外企業と日本の中小企業とのM&Aが年々増加傾向にあるため、このような点には注意しなければなりません。
別の事例もご紹介します。この日本の会社は、英語キーボードのノートパソコン100台が必要でした。しかし発注に関しては海外本社にある購買デスクが全権限を持っており、現地ITパートナーに購買代行させることは認めていません。その後、本社がそれらPCの発注を済ませ、やっと日本に届いたPCを納品後に確認してみると、依頼していた英語キーボードではなく、日本語キーボードのPCだったのです。しかし、時すでに遅し。返品は受け付けてくれませんでした。届いたノートパソコンのうち何台かはキートップを交換して利用できたものの、大部分はそのまま倉庫行きとなってしまいました。そして海外本社は新たに英語キーボードのノートPCを同等数、発注しなければなりませんでした。
納期の遅延は、人的ミスや相互の理解不足だけに起因する訳ではありません。過去には、PCの納品に3カ月ほど要したこともありました。IntelのCPUの供給が世界的に不足していることも理由の一つで、この状況は今も続いています。また、自然災害や政治的混乱により流通がストップしてしまうこともあります。2011年、当時ハードディスクドライブの世界生産の約6割を担っていたと言われていたタイで、台風による大規模洪水が発生。生産ラインが甚大な被害を受け、世界的な供給に影響が出たことは記憶にある方もいるでしょう。昨年、中国で請け負っていた欧オンラインゲーム開発企業のオフォイスリノベーションプロジェクトにおいては、米中貿易戦争の影響により国外からのハードウェアの納品に遅れが発生しました。プロジェクトの工程に大きく影響しなかったのは、不幸中の幸いでした。
このように、購買プロセスには私たちの力の及ばない理由により予期せぬ遅延が生じる場合があります。このような事態を避けるためにも、余裕をもった計画がとても重要です。